
これらの処理薬剤をマーバン、カフジ、クウェートなどの原油とA重油、C重油を用いて作成したムース化油に各種の割合で散布し、焼却実験を行った結果は付録の「焼却処理に関する実験」に詳しく記されているが、ここで結果に大きな影響を与える因子として取り上げられているのは、ムース化された油種、ムース化油の含水率、処理薬剤の種類と散布率、焼却処理前のムース化油量に対する焼却処理されたムース化油量の割合で定義された焼却率や焼却後の残渣の厚さなどである。
また、焼却用の容器は小型の磁性皿、18l石油缶、1m角火皿などであるが、小さな容器はスクリーニング用として各種の試行に使われている。かくて、これらの実験によりムース化油を焼却処理する上で必要とする幾多の知見が得られたが、その中で主要なものを挙げると次の通りである。
(1)エマルジョンを破壊して油水分離をするための処理薬剤としては、油種によらず陰イオン系と非イオン系の界面活性剤がともに有効であるが、重油のムース化油は原油のムース化油に比べてHLBの高い界面活性剤の方が効果が大きいようである。
(2)ムース化油に対する散布割合は溶剤を含めて5〜10%(重量)位が適当と考えられ、その割合を大きくしても必ずしも効果は増さない。
(3)実験的に焼却できたムース化油の含水率は60%を超すが、水分の量が増えると焼却率はやや減る傾向にある。焼却限界は70〜80%位と思われる。
(4)消泡剤の数%の散布は焼却率を上げるのに役立つ場合もあるが、一概にこのものの散布が必須とは言えない。
(5)煤抑制剤の散布は煤の発生を大幅に減らす効果がある。
(6)油ゲル化剤の散布は焼却残渣を固化し、後処理を容易にする効果があるが、このものの作用は油水分離とは逆なので、その使い方は難しく、焼却後に散布する二段階法も考慮に値する。
以上の結果を踏まえると、ムース化油の焼却処理のための薬剤としては油水分離作用に優れた陰イオン系ないし非イオン系の乳化破壊剤と呼ばれる界面活性剤を用いるのがよく、油ゲル化剤や消泡剤の散布は焼却に当たり必要に応じて考えるのがよさそうである。
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